悪魔が伝えるこの世の真実 『兵士の物語』

異空間へいざなう劇場

待ちに待った『兵士の物語』が、まつもと市民芸術館で開幕した。悪魔にそそのかされ、大切なバイオリンを手放す兵士の物語。音楽と朗読、バレエ、演劇を融合させた舞台作品である。

今回は初めて松本以外の東京、大垣、兵庫でも公演が行われるが、やはりこの場所で観たいと思い、松本まで出向いて観てきた。

いつ訪れても、まつもと市民芸術館には現実とは違う空気が流れていて、これこそ劇場だと感じる。この空気が私たちを軽々と異空間へ運んでくれるのだ。

光の差し込むエントランス

ストラヴィンスキーの傑作

幕前のパフォーマンスから、次第にフィクションの世界へ引き込まれ、幕があがるころにはすっかり物語の世界へ。

ストラヴィンスキーがこの音楽劇を書き上げたのは第一次世界大戦の終わりごろ。少人数で旅公演ができるものとして、登場人物は語り手と演者が三人、音楽家はたったの七人で編成されている。

このコンパクトさと反比例するように、想像の余地は果てしなく広い。

目まぐるしく変化する拍子が、物語の摩訶不思議さを際立たせる。明るく楽しい雰囲気なのに、どこか不安定で落ち着かない。人間の欲望と真正面から向かい合うというのは、こういうことなのかと思う。「幸せの在りか」は一体どこなのか。

今回の楽士は、バイオリンの郷古廉さんを始めとする七人の精鋭

作品の魅力にときめく

登場人物は、演出家の串田和美さんが悪魔役を務めるほか、語り手に石丸幹二さん、兵士にバレエダンサーの首藤康之さん、王女にバレリーナの渡辺理恵さん。

私たちに『兵士の物語』を味あわせてくれるこの人たちは、誰よりも作品の魅力にときめいているように思えた。

「兵士の物語2018年」より拝借

「兵士の物語2018年」より拝借

自然あふれる松本の地で、芸術館の異空間で、100年も前に作られた作品が息づいて、私たちの目の前にあらわれる。

悪魔が「これも欲望だろう?」と耳元で囁いたとしても感動せずにはいられない。

もう抗えない。

『兵士の物語』
●2018年9月19日(水)~23日(日・祝)
まつもと市民芸術館 実験劇場
●2018年9月27日(木)~10月1日(月)
 東京都 スパイラルホール
●2018年10月4日(木)
 大垣市民会館 大ホール
●2018年10月6日(土)・7日(日)
 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
作曲:イーゴリー・ストラヴィンスキー
台本:シャルル・フェルディナン・ラミューズ
演出・美術:串田和美
ちょっちょ
ファゴットの長 哲也さんが美少年すぎて驚きました

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ちょっちょです。
4人の子どもと4人の孫に恵まれましたが、パートナーはおりません。たくさん笑って、たくさん泣いて、たくさん楽しんで、たくさん悩んだ波瀾万丈な人生。まだまだ面白がろうと思っています。
私が感じていることが、どなたかの心に響けば幸せです。

※万覚帳(よろずおぼえちょう)とは、まだ余白がある帳面のことです。雑記帳、メモ帳