【ぬ】ぬけがらと沼袋と額田王

ベレー帽の上に

私は昆虫が得意でない。特に蝉の模様。見ると背中がゾゾゾゾッとする。虫に罪は無いのは分かっているのだが、生理的に受け付けない感じ。馴れもあるのかもしれないが、今のところ馴れる予定はない。

蝉の姿を見るのは避けて声のみで存在と親しんでいるが、そのぬけがらには思い出がある。幼稚園の遠足のとき、駐車中のバスの窓から顔を出すと、横を歩いていた園長先生のベレー帽の上にぬけがらがチョコンと乗っていたのだ。

髪の毛のない園長先生だったので、ベレー帽を脱いで取ってもらうお願いをしてもいいのかいけないのか…。幼心にかなり逡巡して、乗せたままでも都合が悪かろうと思い至り、無邪気な素振りで頼んでみた。

私はガサツでマイペースなくせに不要なことに気を回しすぎるのだが、このころには既にこの性格は形成されていたようである。

ぬけがらが欲しかったわけではないので、もらったらすぐに友達にあげてしまった。

この遠足だけ園長先生がベレー帽をかぶっている

わが町、沼袋

通っていた沼袋幼稚園の園歌を今でも歌うことができる。ついでに言えば、小学・中学・高校校歌と伊勢丹の社歌も歌える。

♫ 大きなイチョウのそびえ立つ お山の上の幼稚園
西に富士山くっきりと 町のおうちを下に見る ♫

沼袋幼稚園の園歌に出てくる町は、中野区沼袋である。西武新宿線の沼袋駅は、電車に10分ちょっと乗ると新宿に着く。JR中野駅までは距離にして2kmくらい。便利だが庶民的な町で、人と人がつながっている。本当に小さくだが昔は富士山も見えていた。

私自身が育ち、子どもを育てた町。どっぷりと50年近く過ごした町。歩けば必ず知り合いと会う町。あまり思いが強過ぎると、愛着ではなく執着になってしまうと分かっていても、引っ越した今でも、いつまでもいつまでも思ってしまう。

2019年最初の音が【ぬ】だなんて、沼袋しかないなぁと。

そんな御縁も嬉しい私である。恋だな。

昭和42, 3年ごろの沼袋駅前。第一勧銀が懐かしい

君が袖ふる

“恋”で思い出すのが万葉集。高校時代に手に入れた大島弓子さんの『万葉のうた』には素敵な恋が詰まっていて、何回も何回もページをめくった。私はあまり物を残しておくほうではないが、この本はまだ手元にある。

昔も今も裏表紙の歌が一番好きだ。表紙の美しく上品な女性がユーミン(大島弓子さん)の額田王のイメージなのだろう。

あかねさす 紫野行き 標野行き
野守は見ずや 君が袖振る

天智天皇が近江の蒲生野に狩りに出られた時、それに従った大海人皇子に額田王がさしあげた歌。額田王は、はじめ大海人皇子と結婚し、十市皇女を生んだが、後に天智天皇に召され、宮中に入った。この歌はそういう関係にある時によまれたもの。
袖を振るのは、愛情の表現だった。

<お慕わしいあなたが紫野や御料地をあちこちお歩きになって、わたしに袖を振るのを、野守が見ているではありませんか>

何というおおらかな!!

この歌への返歌も大好きである。

紫草のにほへる妹を憎くあらば
人妻ゆえに 吾恋ひめやも

宴の際に詠んだ余興の歌という説が強いが、純粋な恋の歌だと信じたいものである。

万葉集の“万葉”は、万(よろず)の言の葉。このホームページ「万覚帳(よろずおぼえちょう)」も、素直にまっすぐ、時に情熱的に綴っていこう。

昭和53年発行。裏表紙の上部に480yenと書いてある。なぜyen?

ちょっちょ
大島弓子さんの絵、漫画家さんでは一番好きかもしれないなぁ

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ちょっちょです。
4人の子どもと4人の孫に恵まれましたが、パートナーはおりません。たくさん笑って、たくさん泣いて、たくさん楽しんで、たくさん悩んだ波瀾万丈な人生。まだまだ面白がろうと思っています。
私が感じていることが、どなたかの心に響けば幸せです。
Ally(アライ)であることを表明しています。

※万覚帳(よろずおぼえちょう)とは、まだ余白がある帳面のことです。雑記帳、メモ帳